多様性に溢れたバロック音楽、クラシック音楽の最高傑作をカラヤンの演奏で聴く 第25盤 ヘンデル 合奏協奏曲

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2020年09月25日 23:54


おふくろの味〜情熱漢ヘンデルの人間味

「合奏協奏曲」は、独奏楽器群(コンチェルティーノ)とオーケストラの総奏(リピエーノ)に分かれ、2群が交代しながら演奏する音楽形式です。「協奏曲」とあると、ベートーヴェン以降の協奏曲や、バルトークの「管弦楽のための協奏曲」がイメージしやすいものですが、ヴィヴァルディが「ヴァイオリン協奏曲」を発明したと、鑑賞会では折あることに説明してきました。ヴィヴァルディ以前の、コレッリの「合奏協奏曲」は弦楽アンサンブルで演奏されるのですが、ヴィヴァルディはその演奏形態を踏襲しています。その後ヘンデルの時代になると「リピエーノ」に管楽器が導入されることでより華やかさを増していきます。
ヴィヴァルディの楽譜を主人筋が所有していたこともあって、バッハが熱心に勉強しています。バッハの有名曲「ブランデンブルク協奏曲」は、ブランデンブルク=シュヴェート辺境伯クリスティアン・ルートヴィヒに献呈された故あって、その愛称で親しまれています。自筆譜にはフランス語で「いくつもの楽器による六曲の協奏曲」(Six Concerts Avec plusieurs Instruments)と記されているだけです。ヘンデルの「合奏協奏曲」は、バッハとは違うベクトルで作曲されています。同じバロックの時代にこの作品群と対峙できるのはバッハの「ブランデンブルグ協奏曲」くらいですが、二つを較べれば、バッハとヘンデルの気質の違いがはっきりと見えてきます。ヘンデルは古典作曲家中の巨峰である。バッハが厳格で構成的だとすれば、ヘンデルの音楽は明らかに色彩豊かで流動的です。バッハが「西洋音楽の父」であるならば、ヘンデルは「西洋音楽の母」でなければならない。ヘンデルは、この形式で30曲程度の作品を残しているのですが、最も有名なのは作品番号6の12曲です。
この合奏協奏曲は、正式名称が「ヴァイオリンその他の7声部のための12の大協奏曲」となっています。ここでの「大協奏曲(Grand Concerto)」というのが「合奏協奏曲」のことです。しかし、この「合奏協奏曲集」の面白さが尽きないのは、バッハのように全体構成を念頭に置いて12曲揃えた作品集ではなく、その一つ一つが全て独自性を持った音楽であり、一つとして同じようなものはないという点です。

初版盤で鑑賞する価値あり


  1. DE DGG SLPM139 036 カラヤン ヘンデル・合奏協奏曲

  2. DE DGG SLPM139 036 カラヤン ヘンデル・合奏協奏曲

  3. DE DGG SLPM139 036 カラヤン ヘンデル・合奏協奏曲

  4. DE DGG SLPM139 036 カラヤン ヘンデル・合奏協奏曲
  5. CD

    ヘンデル特有の典雅、豪壮華麗に加え、モーツァルト的な悲しいまでの美しさも味わえ、一つとして同じようなものがない、この12曲に宇宙のすべてが凝縮されています。曲自体はあまり有名ではないようですが、ヘンデルのみならずバロック音楽、クラシック音楽の最高傑作に位置するのではないでしょうか。この演奏は数多いカラヤン/ベルリン・フィルの録音の中でも、演奏技術、完成度の高さを遺憾なく発揮した最高に位置するもの。極上の一時を堪能できること間違いなし。

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