多様性に溢れたバロック音楽、クラシック音楽の最高傑作をカラヤンの演奏で聴く 第25盤 ヘンデル 合奏協奏曲
おふくろの味〜情熱漢ヘンデルの人間味
「合奏協奏曲」は、独奏楽器群(コンチェルティーノ)とオーケストラの総奏(リピエーノ)に分かれ、2群が交代しながら演奏する音楽形式です。「協奏曲」とあると、ベートーヴェン以降の協奏曲や、バルトークの「管弦楽のための協奏曲」がイメージしやすいものですが、ヴィヴァルディが「ヴァイオリン協奏曲」を発明したと、鑑賞会では折あることに説明してきました。ヴィヴァルディ以前の、コレッリの「合奏協奏曲」は弦楽アンサンブルで演奏されるのですが、ヴィヴァルディはその演奏形態を踏襲しています。その後ヘンデルの時代になると「リピエーノ」に管楽器が導入されることでより華やかさを増していきます。
ヴィヴァルディの楽譜を主人筋が所有していたこともあって、バッハが熱心に勉強しています。バッハの有名曲「ブランデンブルク協奏曲」は、ブランデンブルク=シュヴェート辺境伯クリスティアン・ルートヴィヒに献呈された故あって、その愛称で親しまれています。自筆譜にはフランス語で「いくつもの楽器による六曲の協奏曲」(Six Concerts Avec plusieurs Instruments)と記されているだけです。ヘンデルの「合奏協奏曲」は、バッハとは違うベクトルで作曲されています。同じバロックの時代にこの作品群と対峙できるのはバッハの「ブランデンブルグ協奏曲」くらいですが、二つを較べれば、バッハとヘンデルの気質の違いがはっきりと見えてきます。ヘンデルは古典作曲家中の巨峰である。バッハが厳格で構成的だとすれば、ヘンデルの音楽は明らかに色彩豊かで流動的です。バッハが「西洋音楽の父」であるならば、ヘンデルは「西洋音楽の母」でなければならない。ヘンデルは、この形式で30曲程度の作品を残しているのですが、最も有名なのは作品番号6の12曲です。
この合奏協奏曲は、正式名称が「ヴァイオリンその他の7声部のための12の大協奏曲」となっています。ここでの「大協奏曲(Grand Concerto)」というのが「合奏協奏曲」のことです。しかし、この「合奏協奏曲集」の面白さが尽きないのは、バッハのように全体構成を念頭に置いて12曲揃えた作品集ではなく、その一つ一つが全て独自性を持った音楽であり、一つとして同じようなものはないという点です。
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