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2020年05月12日

原作のエピソードをバッサリ切り捨て、逆に語られなかった行間を補完して描かれた完成度を誇る、萩尾望都恐るべし。

百億の昼と千億の夜


どんなに突飛なストーリーでも丁寧に説明をすれば人に納得してもらえる作品が作れる


〝少女漫画の神様〟とも評される漫画家、萩尾望都さんの作品も、ドラマ化された『11人いる!』をはじめ、『スター・レッド』、『AWAY-アウェイ』などSF作品が多い。
幼稚園か小学校1年生くらいの時に、父親に連れられて観た怪獣映画が映画の原体験だと語る萩尾さん。とにかく怖くて半分くらい目をつぶっていたそうで、後にディズニー映画のような楽しい作品を知ってから、映画が好きになったそうだが、1970年代に地方の映画館で観たH.G.ウェルズ原作の「タイム・マシン」は、〝どんなに突飛なストーリーでも丁寧に説明をすれば人に納得してもらえる作品が作れるんだ〟と感激したそうで、分かりやすく伝える方法のお手本みたいな映画だと語っている。
子供の頃からSF小説が大好きで、冒険ものと同じような感覚で読んでいたというが、アメリカの作家アイザック・アシモフに出会ったことで〝地球の未来はどうなるんだろう〟ということを考えるようになり、それが楽しかったと振り返り、漫画との出会いについて、「幼稚園の頃から手塚治虫や石ノ森章太郎が好きで、夢中で読んでいました。中学生くらいまでは真似して描いていたんですが、勉強すればするほど難しさがわかってきて、漫画家にはなれないと思いました。高校生になって手塚治虫の「新撰組」という漫画を読んだら、当時の自分の不安定な状況と主人公たちの様子がシンクロしてしまって、突然〝私は漫画家にならないといけない気がする!〟と思い立ちました」と語る。
男性ファンも多い萩尾望都さんがセレクトした映画は、『タイム・マシン』、『ゴジラ』、『2001年宇宙の旅』、『惑星ソラリス』、『ブレードランナー』、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』。
宇宙空間を行く宇宙船の光と影のコントラストがとても美しく、10年くらい物語の結末の意味を考えていたという「2001年宇宙の旅」については、「あそこまで美しく作れるのかと衝撃を受けました。ここまで集中して仕事ができるのはすごいなと。斬新な音楽の使い方や構図は驚きの連続でした」と絶賛しました。

語られなかった行間を補完して描かれている


光瀬龍の「百億の昼と千億の夜」は、世界・神話・宗教に対する別の見方を啓示していて、プラトン、シッタータ、阿修羅、ナザレのイエス、ユダ、彌勒など史実上名を残す人物や存在の本来の役割はこうではないか? ― と新たな捉え方で宇宙を解明しています。
気が遠くなるほどのスケールで。こういう原作アリの作品は、得てして漫画化の際にエピソードがバッサリ切り捨てられる傾向にあります。
萩尾望都が漫画化した、この作品でも勿論そういった面はあるんですが、逆に語られなかった行間を補完して描かれている部分もあり、漫画化された物語の中でも非常に上質の完成度を誇っています。萩尾望都恐るべし。
読む年齢、時期、タイミング次第では、原体験として価値観を揺るがすであろう内容を含んでいる作品です。


Posted by 武者がえし at 23:37
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