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2020年09月01日
クラシック音楽の大名曲を、カラヤンの名演で選ぶ チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲
自分探しの旅の末に
大作曲家中チャイコフスキーはカラヤンの十八番でもあり、同時代の指揮者の中では数曲作曲を残しただけのカラヤンが自由にやりやすい音楽だったようだ。交響曲や協奏曲それぞれ他に数種の録音が残されていますが、表現の徹底と密度の高さ、仕上がりの完璧なことでは、クリスチャン・フェラスを独奏に据えての1960年代の演奏は群を抜いている。
バレエ『白鳥の湖』が完成し、オペラ『エフゲニー・オネーギン』も完成している1877年にはアントニナ・イワノヴナと結婚したものの、同性愛者だったチャイコフスキーには夫婦生活が耐えられず、この結婚は失敗し、チャイコフスキーはモスクワ川で自殺を図るほど精神的に追い詰められた。翌年に12年間勤めたモスクワ音楽院講師を辞職する。それから約10年間、フィレンツェやパリ、ナポリやカーメンカなどヨーロッパ周辺を転々とする生活を送る。スイスに於いて、友人でヴァイオリニストのイオシフ・コテックと再開。故郷ロシアの民族舞曲を再び聞いて心癒したチャイコフスキーは、3年前にパブロ・デ・サラサーテが初演して大成功を収めたエドゥアール・ラロのヴァイオリン協奏曲第2番《スペイン交響曲》(Symphonie espagnole )ニ短調作品21の譜面を携えていた彼の演奏を聞くやインスピレーションを受けて、この《ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品35》を、わずか二十日間でかきあげた。

大戦後の新しい音楽様式探し
第1楽章は西ヨーロッパのヴァイオリン協奏曲のスタイルを踏襲している。カラヤンは序奏部分1分間のうちに息を呑む間も許さないくらいオーケストラを精密にコントロールして音楽をダイナミズムにまで持っていく。フェラスの「官能的な美観と情熱」が鳴り響きだすと、あとはスコアに書き込まれた音符達が機能的なオーケストラによってこの上もなく美しい響きへと変換されていくだけだ。彼のヴァイオリンはカラヤンの協奏曲を構成するパーツの一つとなって外観上は一切の恣意性が排除され、フルトヴェングラーの亡霊の面影は跡形もなく消え去っています。フェラスとカラヤンは、過去の巨匠達とは異なる価値観に基づいて新しい世界を切り開いていこうとしている。ベルリン・フィルもそれを楽しんでいる。カラヤンの音楽は、いわゆる「コアなクラシック音楽ファン」からは批判され続けたのですが、結果としてはこの録音がチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲演奏のスタンダードになっていったという「事実」の重みは避けて通ることは出来ない。
初版盤で鑑賞する価値あり
Posted by 武者がえし at 23:54
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