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2020年09月30日

音響的効果の追求が尋常ではないカラヤンのマーラーを聴く 第30盤 マーラー 大地の歌


大地の哀愁に寄せる酒の歌 ― 李白の詩「悲歌行」による

なんと美しくあることか、黄金の杯を満たすこのうま酒は、
しかし飲むのを待たれよ、まずは歌でも一つ歌おうぞ!
憂愁を誘うこの歌を
君たちの心に哄笑として高鳴らせよう。
憂愁が迫り来ると、
心の園も荒涼でいっぱい。
歓びの情もその歌う声もしおれ果て消えゆくかな。
生は暗く、死もまた暗い。

この家の主よ!
君が酒蔵には黄金の酒が満ちている!
ここにある琴を、私の琴としよう!
この琴をかき鳴らし、盃を尽くすことこそ
最もふさわしいだろう。
ほどよき時に、なみなみと注がれた一杯の盃は、
この大地の全ての王国にも優る!
生は暗く、死もまた暗い。

天空は永久に(あお)く、しかも大地は
永遠に揺るがずにあり、春ともなれば花咲き乱れる。
だが人間たる君よ、君はどれだけ生き長らえていくものか?
君は百歳とは(なぐさ)むことは許されぬ、
全てこの大地の(はかな)き戯れの上では!

そこかしこを見下ろしたまえ!
月光を浴びた墓の上に
座してうずくまる者は荒々しくも不気味な物影、
それは猿一匹! 聴け、その叫びが
この生の甘美な香りに甲高く絶叫する様を!

いまこそ酒をとれ!
いまこそ、その時だ、友よ!
この黄金なる盃を底まで飲み尽くせ!
生は暗く、死もまた暗い!

DGG 2707 082 カラヤン マーラー「大地の歌」

パリ万博に「中国(当時は清国)テーマパーク」があったとしたら

日頃、マーラーを音楽談義の魚としてまな板には挙げないのですが、今回選ぶにあたって、マーラーについて、ブルックナー以上に理解が進んでいることに気がついた。映画「マーラー」に心打たれたからだろうが、その場面と音楽の結びつきを理解の助けにしてきたからだろうか。交響曲と歌曲ともに、代表的な交響曲全集、話題になった録音は意外なほど繰り返す聞く機会を得てきた賜物だろうか。ブルックナーも同じウィーン音楽ではあるが、マーラーの音楽の各楽章はキャラクターが立っている。1963年に「鉄腕アトム」が毎週定時に放送されるTVアニメとしてが登場して、TVアニメ全盛の1970年台、1980年台の数々、円熟に達する1990年台。その頃のアニメ・キャラクターのようだ。比べて、昨今の京都アニメーションが作るアニメの一派は、ブルックナータイプと言っていいだろう。
「大地の歌」は管弦楽伴奏付き歌曲以外のなにものでもない。曲は唐詩のドイツ語訳をテキストにして自由に用いている。カラヤンの演奏とソリストの歌唱はいい。満点の演奏だが、もうちょっと人間臭さがあってもいいんじゃないか、と思う。でも比肩する録音は出てくるものではない。対局にあるバーンスタイン盤で、ルートヴィヒは歌っているので、対象とするのが面白い。
5番同様音響的効果の追求が尋常ではない。70年代にカラヤンが追い求めた音響美学の成果のひとつといえる。誰にも真似できないカラヤン音響主義を具現化した名盤。

初版盤で鑑賞する価値あり

  1. DE DGG 2707 082 ルードウィッヒ&コロ・カラヤ…
    DE DGG 2707 082 ルードウィッヒ&コロ・カラヤン・ベルリンフィル Mahler Das Lied von der Erde Ruckert-Lieder
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  4. CD

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