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2020年11月17日

横溝正史の金田一耕助の事件「獄門島」を重ねてみると面白い ―

オリエント急行殺人事件 アーバスノット大差 1974これは舞台劇の映画化。原作は「007/サンダーボール作戦」('65)で知られる脚本家ジョン・ホプキンスの舞台用戯曲の処女作「This Story of Yours」。ロイヤル・コート・シアターでの上演を見て強い感銘を受けたというコネリーは、ホプキンス本人に映画用の脚色を依頼し、自ら主人公ジョンソン巡査を演じることにした。
ショーン・コネリーが「007/ダイヤモンドは永遠に」でジェイムズ・ボンド役に復帰するときの付帯条件で、予算合計200万ドル以内で主演映画の企画2本を作ることになった。撮影期間は10日間。監督にはシドニー・ルメットが指名された。90万ドルの低予算映画ながら、製作費を回収するのに9年を要したという興行的には評価は低いが、失敗作で片付けるには惜しい野心的な作品である。
自ら望んだ役柄ゆえに、コネリーの大熱演は際立つ。日々目の当たりにする残酷で悲惨な犯罪の現場状況に神経を蝕まれ、必ずしも正義が全うされるわけではない司法の現実に怒りや不満を鬱積させたジョンソン巡査。知らず知らずのうち、己の中に怪物を作り上げてしまった彼の深層心理を通し、日常的に過度なプレッシャーを強いられる現代人の悲劇を描いた作品だ。
終盤で明らかにされるジョンソン巡査とバクスターの密室での応酬は、ショーン・コネリーとイアン・バネンの白熱した演技が凄まじい火花を散らせる。果たしてバクスターが本当に犯人なのかどうか、彼を尋問中に殺めてしまったジョンソン巡査はどのような罰を受けるのか。劇中では一切触れられない。
職務に忠実ゆえ壊れてしまう生真面目なジョンソンとは対照的に、仕事は仕事と割り切る合理的なエリート肌のカートライト警視を演じる名優トレヴァー・ハワード、あえてジョンソンの神経を逆なでさせて彼の深層心理を暴くバクスター役のイアン・バネンと、脇を支える役者陣も素晴らしい仕事をしている。



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