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2020年10月09日
悲愴感に打ちひしがれながらも強く生き抜いていく ― 音楽史上初のタイトル付きソナタを聴き比べる。

初版譜には「大ソナタ 悲愴 Grande Sonate pathétique」と書かれています。当時ピアノ・ソナタにタイトルをつけることはありませんでしたから、初めてのタイトル付きソナタと言えましょう。
ベートーヴェンがウィーンでピアニストとして成功しようと頑張りしすぎて、夏風邪がもとで難聴を患い。作曲家として進み始めた、1798年から1801年まで、ナポレオンが率いるフランス軍がエジプト・シリアへ遠征した。5万の兵が投入されたこの東方遠征には、151名もの民間知識人が同行していました。イギリスのインド航路を遮断すべくの遠征であった。戦果は散々だったけど、エジプト文明の発見という、人類としては大きな収穫を得ています。18世紀当時の調性格論に鑑みると、「悲愴」という言葉は、悲劇的なもの、というよりも情熱に近いのかもしれません、悲愴感に打ちひしがれながらも強く生き抜いていく、というエールが込められています。
自筆譜が紛失しているため、タイトルをベートーヴェン自身がつけたという証拠はないそうですが、初版譜の表紙に印刷されているということは、承認していたのは確かなようです。「ソナタにタイトルをつける」という史上初の試みまでやってのける。この点でも革新的なベートーヴェンです。